歴史的な分類

タイマッサージは学術的には、王室マッサージ(Royal massage)と、民間マッサージ(Folk massage)に分類されます。王室マッサージは国王のためのマッサージで、礼儀を重視し、施術は指圧だけで、ストレッチはありません。王様を足で踏んだり、体を密着させるわけにいかないためです。民間マッサージは庶民の間で伝えられてきたマッサージで、ストレッチを多く含むのが特徴です。民間マッサージには多くの種類があり、地方によってやり方が異なります。マッサージスクールとして有名な、チェンマイのオールドメディソンホスピタルで教えられているマッサージには民間マッサージの古い手技が多く残っています。
タイマッサージはタイ古式マッサージとも言われますが、純粋な形での王室マッサージや民間マッサージを教える学校はほとんどありません。王室マッサージと民間マッサージで行う多くのテクニックから効果の高いものを選び、西洋医学的な知見も加えて再編集したものが現代のタイマッサージです。
メジャーな流派



日本ではタイマッサージと言えばワットポー、そしてチェンマイという程、ワットポー(バンコク)スタイルとチェンマイスタイルこそがタイの二大流派だと思われています。ワットポースタイルは、ワットポーに隣接する私立のタイマッサージスクールで教えられているスタイルで、ワットポーで伝えられた古いマッサージそのものではなく近年、西洋医学や恐らく日本の指圧の知識も消化した上でかなり合理的に再構成された指圧重視のスタイルです。その完成度の高さと、外国人をも対象にした積極的な営業で数多くのマッサージ師を輩出しています。
チェンマイスタイルは、故シントーン氏が50年ほど前にチェンマイで始めたタイマッサージのスタイルです。シントーン氏は実はワットポーでもタイマッサージを学んでおり、チェンマイに伝わる古いスタイルと組み合わせて120分のベーシックマッサージを創作しました。ハーブ療法と組み合わせた伝統医療の病院、オールドメディソンホスピタルを設立して安価で良心的な治療を行ってきたため地元の人から深く信頼されています。シントーン氏は自分の技術を教え子達に惜しげもなく開放したので、オールドメディソンホスピタルで学びキャリアを積んだマッサージ師が自分の学校(ITM、ロイクロ、ワンディ、ニマンヘミン等々)を設立し、いつしかチェンマイスタイルとして認知されるようになりました。
ところが、タイ本国にはもうひとつ、これぞ真打と言う巨大流派が存在します。タイ政府主導で開発され、近い将来(タイの)国家資格になることが決まっているタイ厚生省の標準タイマッサージです。
タイ政府はタイマッサージを一大産業として育てるため、厚生省、文部省、労働省、そしていくつかの大学が協力して標準化と普及活動を行っています。一般向けの短時間のセミナーから、800時間のプロ養成コースまで数多くの講習会が格安(あるいは無料)でタイの各地で開催されています。
タイ厚生省スタイルはチェンマイスタイルの優美なリズムとワットポーの指圧の両方の良さを併せ持ち、ストレッチ技も多種ある、素晴らしいタイマッサージです。この素晴らしいスタイルがなぜ日本人には知られていないのでしょうか。その理由は簡単です。タイ政府が「外国人に教えることを認めていない」からです。知識や技術の国外流失を防ぐため、タイ国籍がないと講習会に参加できないのです。



では、タイ厚生省スタイルを学ぶことができないかと言えばそんなことはありません。バンコクにあるピシットタイマッサージ・トレーニングスクールで習うことができます。厳密には、ここで教えているのはピシット氏のピシットスタイルですが、タイ厚生省スタイルは、伝統医療に詳しいサンリー・チャイリー教授と、各地に伝わるタイマッサージの豊富な知識と長い施術経験を持つピシット・ベンジャモンコンワリー氏が中心となって開発されたスタイルです。ですので、ピシットスタイルはタイ厚生省スタイルとほぼ同じ内容になっています。